Ruby on Rails (以下、Rails) には複数のバージョンが存在していますが、Rails 5.2 は既にサポートが終了していることをご存知でしょうか?
この「サポート終了」という言葉が何を示しているのか、そして日々の開発にどのような影響を与えるのかを理解することは重要です。
この記事では「サポート終了」の危険性と、それを回避するための方法について解説します。
サポート終了(EOL)とは何か?
バージョンが変わると何が違うのか?
我々が使うさまざまなソフトウェア、ツール、フレームワークは、時間とともにそのバージョンが変わります。
そして新しいバージョンがリリースされるたびに、開発者は新しい機能を追加し、既存の問題を解決します。
これは、皆さんが頻繁に経験するスマートフォンのOSアップデートと非常に似ています。
新しいバージョンでは、新しい機能が追加され、使いやすさが改善され、そして何よりも、セキュリティが強化されます。
EOL(End Of Life)という用語の解釈
しかし、すべてのソフトウェアが無限にサポートされるわけではありません。
適切なタイミングで、ソフトウェア開発者は古いバージョンのサポートを打ち切る決断を下します。
このことを一般的にEOL(End Of Life)と呼びます。
このEOLになったバージョンは、重要なセキュリティアップデートやバグ修正が行われなくなるのです。
セキュリティアップデート終了の意味
「セキュリティアップデートが行われない」状況とは、具体的には新たに見つかった脆弱性(セキュリティホール)に対する修正が行われないということを意味します。
これは、開発者の視点からみれば、アプリケーションが攻撃者に狙われやすくなるというリスクを意味します。
「賃貸物件」を例に考えてみましょう。
例えば、ある賃貸物件のドアが壊れているとします。
この場合、賃貸物件を借りている人は通常、大家さんに連絡して修理を依頼することでしょう。
しかし、もし大家さんが「この物件はもう管理していない」と言ったらどうでしょうか?
この場合、賃貸物件のドアは修理されず、そのまま放置されることになります。
このように、セキュリティアップデートが行われない状況は、賃貸物件のドアが壊れたまま放置される状況と同じです。
Ruby on Rails のサポート状況:現在どのバージョンがサポートされているのか?
Rails 5.2 :サポート終了済み
Railsのバージョン5.2は2022年の時点で既にサポートが終了しています。
これは具体的には、Rails 5.2のセキュリティアップデートやバグ修正がもはや提供されないということを意味します。
ただし、依然として一部の開発者がRails 5.2を使っていることは事実です。
もちろん、学習のために一時的に個人での利用として、手元でのみ Rails 5.2 を使う分にはそこまで影響はないでしょう。
しかし、Rails 5.2を使っているアプリケーションをデプロイ(公開)するなど、本番環境で運用するのはセキュリティ上のリスクが高いと言えます。
今はRails 5.2で学習をしていたとしても、将来的にはサポート中のバージョンを学び、新しいバージョンに移行することをおすすめします。
Rails 6.0 もサポート終了済み
さらに、Rails 5.2だけでなくRails 6.0も既にEOLを迎えています。
つまり、Rails 5.2だけでなく、6.0を使っている方も、同じくセキュリティアップデートが提供されない状況に直面しています。
そのため、Rails 6.0を使っている開発者も、Rails 5.2と同じように、注意が必要となります。
Rails 6.1 以上は現在もサポートが続いている
この記事を執筆している2023年7月時点ではRails 7.0を含む、Rails 6.1以降のバージョンは現在もサポートが続いています。
これらのバージョンについては新たに見つかった脆弱性に対する修正や、バグの修正が引き続き提供されることを意味するため、安心して利用することができます。
そのため、Rails 6.1以降のバージョンを使っている方は、特に心配する必要はありません。
バージョンアップが重要な理由
バージョンアップが重要であるとされる背後には、一体どのような理由があるのでしょうか?
なぜ定期的にバージョンアップを行うべきなのでしょうか?
以下、その詳細な理由を深掘りしてみましょう。
新機能とバグ修正:最新バージョンの強力な武器
最新バージョンのライブラリには、さまざまな新機能とバグの修正が含まれます。
新機能はアプリケーションの性能を向上させ、より豊かな体験をユーザーに提供します。
また、バグの修正は、既知の問題を解決し、アプリケーションをより安全かつ効率的に運用するための重要な手段となります。
コミュニティサポート:新しいバージョンの巨大な利点
新しいバージョンのライブラリほど、開発者コミュニティからのサポートも充実しています。
これは、もし何か問題に直面したとき、その解決策を見つけやすい、という大きなメリットがあります。
一方、古いバージョンのライブラリは、コミュニティからのサポートがほとんど期待できません。
何かバグが見つかって報告したとしても「最新バージョンにアップグレードしてください」という回答が返ってくる可能性があります。
コミュニティと直接関わりがなかったとしても、関係がないとは言えません。
古いバージョンは当然使っている人が少なく、かつ解決策の情報も古いため、ネット上の記事を参考にしても解決できないことがあります。
プラグインやライブラリとの互換性:最新バージョンの魅力
最新バージョンのライブラリは、新しいプラグインやライブラリとの互換性も確保されやすいです。
(互換性とは、あるライブラリが他のライブラリと一緒に使えることを意味します。)
これは、新しい技術をアプリケーションに導入する際の障壁を低く保つことを意味します。
つまり、常に最新の状態を維持することで、新たな技術の採用をスムーズに行うことが可能になるのです。
逆に、古いバージョンのライブラリは、新しいプラグインやライブラリとの互換性が低い傾向にあります。
そのため、導入しようとした便利なプラグインが使えない、ということも起こり得ます。
まとめ
新しいバージョンの Rails を学び、使っていただくことの重要性をご理解いただけたでしょうか?
Rails を勉強できる学習サイトや教材には、まだ一部ながらサポート終了済みの Rails バージョンを前提とした教材が多く存在しています。
しかし、古いバージョンを使い続けることの危険性を説明していないことがほとんどです。
サポート終了済みのバージョンを使うことのリスクを知り、より新しいバージョンでの学習を続けることをおすすめしたいです。