Ruby と Go どっちを先に学ぶべき? Rails エンジニア視点で考えてみた

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私がプログラミングを学び始めたときには、学習のしやすさから Ruby がおすすめされており、私も Ruby から学びました。

その後、現在は主に Ruby on Rails を扱うエンジニアとして Web アプリケーションを開発しています。




そんな中、Webアプリ業界では「Go」という言語が Web アプリケーション開発にも使われるようになってきました。

Go はパフォーマンスの高さから注目を集めているため、Ruby と Go のどちらを先に学ぶべきか迷う方もいるのではないでしょうか。

https://go.dev/




そこで、今回は Rails エンジニアの視点から、Ruby と Go のどちらを先に学ぶべきかを解説します。
※ Rails エンジニアとしての主観が入っている部分もあると思いますが、ご了承ください。



ただし、「絶対にこっち!」というような一つだけの結論を出すものではありません。

やりたいことによってどちらを先に学ぶべきかを考えるための判断基準として参考にしていただければと思います。



この記事は、以下のような悩みを抱えている方におすすめです!

  • プログラミングを始めたばかりの方
  • Web アプリ開発に興味があり、Ruby と Go のどちらを学ぶべきか迷っている方
  • Ruby を学び始めたけど、Go も学びたいと思っている方
  • すでにプログラミングをしていて、新しい言語に挑戦したいと思っている方
目次

Ruby 言語の特徴

直感的に書ける

Ruby は直感的にコードを書くことができます。
これは、自然言語に近い文法を採用しているためで、特に英語に似た構文が多いことから、初めてプログラミングに触れる人にも理解しやすいです。

たとえば、日付を表すオブジェクトを生成するには、以下のように記述します。

date = Date.new(2023, 1, 1)

このように、Ruby では「オブジェクト.メソッド名(引数)」という形式でメソッドを呼び出します。
この構文は、英語の文章に近いため、初心者でも直感的に理解できます。

また、オブジェクトの内容を調べる際には以下のように ? を付けてメソッドを呼び出します。

# 例1
date.saturday?

# 例2
hoge_list.empty?

このように、Ruby ではメソッド名に ? を付けることで、メソッドが真偽値を返すことを表現します。

まるで問いかけるように内容を調べることができるため、直感的に理解しやすいです。

少ないコードで書ける

Ruby は効率的な書き方を可能にします。
この言語は、豊富な内蔵メソッドを備えているため、複雑な操作も簡潔に表現することが可能です。
例えば、配列の各要素に対して同じ操作を行いたい場合、Ruby では数行のコードでシンプルに記述できます。
このように少ないコードで多くの機能を実現できるため、開発の効率が大幅に向上します。

たとえば、JavaScript では以下のように、配列の各要素に対してループ処理を行います。

const array = [1, 2, 3, 4, 5];
for (let i = 0; i < array.length; i++) {
  console.log(array[i]);
}

一方、Ruby では以下のように、配列の各要素に対して each メソッドを呼び出すだけで、同じ処理を実現できます。

array = [1, 2, 3, 4, 5]
array.each do |n|
  puts n
end

さらに、Ruby では each メソッドを省略して、以下のように記述することもできます。

array = [1, 2, 3, 4, 5]
array.each { |n| puts n }

このように、Ruby では少ないコードで多くの機能を実現できるため、開発の効率が大幅に向上します。

人気のフレームワーク Ruby on Rails が高機能

Ruby の最大の強みの一つは、Rails という強力なフレームワークの存在です。
Rails は「Convention over Configuration(設定より規約)」の哲学のもと、標準的な方法で迅速にアプリケーション開発を進めることができます。
たとえば、データベースへのアクセスや HTML のテンプレートの生成など、Web アプリケーション開発に必要な多くの機能が標準で組み込まれています。
これにより、開発者は基本的な設定作業から解放され、アプリケーションの具体的な機能開発に集中できます。

ライブラリが豊富

Ruby は豊富なライブラリを持っています。
これらのライブラリはオープンソースコミュニティによって開発され、Web スクレイピングからデータ分析、GUI 開発まで幅広い分野で使用できます。
例えば、HTTP 通信を簡単に行える「Net::HTTP」や、データの永続化を支援する「ActiveRecord」などがあります。
これらのライブラリを利用することで、開発者は基本的な機能から複雑な処理まで、迅速かつ容易に実装できます。

require 'net/http'

uri = URI('https://example.com/index.html')
response = Net::HTTP.get(uri)

メタプログラミングが可能

Ruby ではメタプログラミングが容易に行えます。
メタプログラミングとは、プログラムが自身の構造を動的に変更することを指し、Ruby ではプログラムの実行中に新しいメソッドを生成することが可能です。
例えば、define_methodを使用することで、実行時にプログラムの振る舞いを柔軟に変更できます。
このような柔軟性は、複雑なビジネスロジックや動的な機能が必要なアプリケーションの開発に特に有効です。

メリットがまだわかりづらいかと思うので、具体的な例を挙げて説明します。
例えば、以下のようなクラスがあったとします。

class Report
  def initialize
    @data = { income: 1000, expense: 500, profit: 500 }
  end

  def income
    @data[:income]
  end

  def expense
    @data[:expense]
  end

  def profit
    @data[:profit]
  end
end

このReportクラスは、収入(income)、支出(expense)、利益(profit)のデータを持っており、それぞれのデータにアクセスするためのメソッドが定義されています。
しかし、これらのメソッドは非常に似ており、新しいデータタイプを追加するたびに同様のメソッドを再度書く必要があります。
ここでメタプログラミングを利用すると、コードをよりシンプルにすることができます。

class Report
  def initialize
    @data = { income: 1000, expense: 500, profit: 500 }
  end

  [:income, :expense, :profit].each do |type|
    define_method(type) do
      @daata[type]
    end
  end
end

この例では、define_methodを使って、incomeexpenseprofitメソッドを動的に生成しています。
これにより、類似したメソッドの重複を避けることができ、将来的な拡張性も高まります。
新しいデータタイプを追加する場合は、単に@dataハッシュに追加するだけで済みます。

このように Ruby のメタプログラミングは、コードを DRY(Don’t Repeat Yourself)に保つための強力なツールです。
また、フレームワークやライブラリの開発においても、柔軟性や拡張性を提供するために広く利用されています。
初心者には少し複雑に感じるかもしれませんが、慣れれば Ruby のプログラミングがより楽しく、効率的になることでしょう。

Go 言語の特徴

処理速度が速い

Go の大きな特徴はその実行速度の速さです。
コンパイル言語である Go は、最適化されたバイナリコードを直接実行するため、非常に高速に動作します。
これは、大規模なサーバーアプリケーションを開発する際に特に重要で、応答時間を短く保つことができます。
例えば、リアルタイムデータ処理や大規模なデータベース操作など、高速処理が求められる場面でその力を発揮します。

文法がシンプルでわかりやすい

Go のもう一つの特徴は、その文法のシンプルさです。
Go の設計思想の一つは、不必要な複雑さを排除することにあり、これにより学習の障壁が低くなっています。
たとえば、Go には「for」が唯一のループ構文であり、これ一つで様々なループ処理が実現できます。
このシンプルさは、初心者が迅速に言語を習得し、また、大規模なチーム開発においてコードの読みやすさと保守性を高める効果があります。

例を見てみましょう。

Ruby でループ構文を書く場合、以下のように forwhileuntileach など、複数の構文を使い分ける必要があります。

# for
for i in 1..5 do
  puts i
end

# while
i = 1
while i <= 5 do
  puts i
  i += 1
end

# until
i = 1
until i > 5 do
  puts i
  i += 1
end

# each
[1, 2, 3, 4, 5].each do |i|
  puts i
end

一方、Go でループ構文を書く場合、以下のように for だけを使います。

for i := 1; i <= 5; i++ {
  fmt.Println(i)
}

Ruby のようにさまざまな構文を使えるのはメリットでもありますが、初心者にとってはどの構文を選ぶべきか迷うこともあります。
一方で、Go では for 文だけを覚えれば様々なループ処理が可能です。
この単純さが、学習のしやすさやコードの明快さにつながり、大規模なプロジェクトでもコードの理解やメンテナンスが容易になります。
プログラミング初心者にとっては、Go のこのようなシンプルさが、学びやすく、かつ実用的なスキルを身につけるのに役立つでしょう。

型宣言により安全性が高い

Go では厳密な型システムにより、プログラムの安全性が高まります。
各変数や関数の型が明確に宣言されるため、型の不一致によるエラーをコンパイル時に検出し、実行時のバグを減らすことができます。
例えば、整数と文字列を誤って混合して使用するような間違いは、コンパイル時に発見され、修正することができます。
このような型の厳密性は、特に大規模で複雑なシステムの開発において重要です。

例を見てみましょう。

Go で文字列を使用する場合、以下のように string という型を明示的に宣言します。

var hello_str string = "Hello, World!"

このように型宣言を行うことで、hello_str には文字列しか代入できなくなります。
たとえば、以下のように整数を代入しようとすると、コンパイルエラーが発生します。

var hello_str string = 123

このように、Go では型の不一致によるエラーをコンパイル時に検出することができます。
これにより、実行時のバグを減らすことができます。

並列処理に向いている

Go は並列処理に強い言語です。
Go の「ゴルーチン」と呼ばれる軽量なスレッド機構を用いることで、複数のタスクを同時に効率良く処理することができます。
これは、例えば Web サーバーで多数のユーザーからのリクエストを同時に処理するような場面で非常に有効です。
ゴルーチンを用いることで、リソースの消費を抑えつつ、高いパフォーマンスを実現することが可能です。

ビルドが速い

Go ではビルドプロセスが非常に高速です。
これは、依存関係の管理がシンプルであることと、効率的なコンパイルアルゴリズムによるものです。
開発の際には、この高速なビルドにより、短いサイクルで試行錯誤を行うことが可能になります。
特に、大規模なアプリケーションを開発する際には、このビルドの速さが開発者の生産性を大きく向上させます。

やりたいこと別で考える向き・不向き

ここまでで、Ruby と Go のそれぞれの特徴を見てきました。

ここからは、それぞれの特徴を踏まえて、どのようなプロジェクトに適しているかを考えていきましょう。

小〜中規模な Web アプリケーション開発:Ruby

Ruby、特に Rails フレームワークは小〜中規模の Web アプリケーション開発に最適です。
Rails の迅速なプロトタイピング機能と豊富なライブラリは開発者にとって大きな利点であり、直感的な文法と高機能性が、ブログやオンラインストアなどのプロジェクトを短期間で立ち上げるのに理想的です。
このため、特に迅速な開発が求められる小〜中規模プロジェクトに Ruby は適しています。

大規模な Web アプリケーション開発:どちらでも OK

大規模な Web アプリケーション開発では、Ruby と Go がそれぞれ異なるメリットを提供します。
Ruby/Rails は開発の迅速化に貢献する一方で、Go は高いパフォーマンスと優れた並列処理能力を提供し、高負荷状況下でも安定して動作します。
例えば、大規模な E コマースサイトの構築では、Ruby は初期開発の速度を、Go は運用時の安定性をそれぞれサポートします。
このため、プロジェクトの特性に合わせて適切な言語を選択することが重要です。

パフォーマンスが重要な Web アプリケーション開発:Go

パフォーマンスが重要な Web アプリケーション開発では、Go が最適な選択肢です。
Go の高速な実行速度と効率的なメモリ管理は、リアルタイムでの大量データ処理や高負荷な状況下での安定性を求めるアプリケーションで特に重要です。
例えば、リアルタイムの分析ツールや大規模なソーシャルネットワークサービスにおいて、Go はシステムの応答時間を短縮し、全体のパフォーマンスを向上させます。

マイクロサービスの開発:Go

マイクロサービスアーキテクチャの開発には、Go が特に適しています。
軽量で高速な Go は、独立したサービスを効率的に構築・運用するために必要な特性を持っており、ゴルーチンによる並列処理はマイクロサービスのパフォーマンスを最適化します。
クラウドベースのアプリケーションや金融システムなど、複数のマイクロサービスを統合して運用する場合、Go の特性が効率的な開発と運用を可能にします。

初学者のポートフォリオ作成:Ruby

初学者がポートフォリオを作成する際には、Ruby がおすすめです。
特に Rails フレームワークは初心者にとって学びやすく、プロジェクトの迅速な開発をサポートします。
例えば、個人的なブログや小

規模なオンラインポートフォリオサイトを構築する際に、Rails を使用すると、比較的短期間でアイデアを具現化できます。
Ruby の直感的な文法と総合的なフレームワークは、初学者にとってプログラミングの入門に最適な環境を提供します。

どちらを先に学ぶべきか

Ruby を先に学ぶべき人

プログラミングの学習に不安がある方

Ruby の文法は自然言語に近いため、プログラミングの基本を理解するのに最適です。

Ruby の文法は、英語のような自然言語に近いため、初学者にとって直感的で理解しやすいと言われています。

また、プログラミングにおいて重要な「オブジェクト指向」という考え方を、Ruby は簡単に理解できるように設計されています。

さらに、Ruby は「動的型付け言語」と呼ばれる言語の一種で、変数の型を明示的に指定する必要がないため、プログラミングの学習におけるハードルを下げます。

そのため、Ruby はプログラミングの学習がはじめてで不安がある方に最適です。

迅速なプロトタイピングを重視する方

Ruby、特に Rails フレームワークは開発サイクルを加速します。

Rails の「Convention over Configuration」の哲学により、開発者は面倒な設定作業から解放され、アイデアをすばやく実現することに集中できます。

このアプローチは、プロトタイプの迅速な開発や、アイデアの検証を素早く行いたいスタートアップ企業や個人開発者にとって大きなメリットです。

実際、Rails は多くのスタートアップ企業で採用されており、その開発効率の高さが証明されています。

デザインやフロントエンドにも関心がある方

Rails はフロントエンドとバックエンドの開発をサポートしており、Web アプリケーションの総合的な開発スキルを身につけたい方に最適です。

Rails はビュー層のカスタマイズや JavaScript の統合を容易にし、開発者がフロントエンドのデザインとバックエンドのロジックの両方を扱うことを可能にします。

また、Rails の「Asset Pipeline」は CSS や JavaScript の管理を簡単にし、開発プロセスを一層効率化します。

そのため、Rails はデザインやフロントエンドにも関心がある方には向いています。

Go を先に学ぶべき人

Go は次のような方に適しています:

高パフォーマンスなシステムを開発したい方

ここまで見てきたように、Go は高速なコンパイルと実行速度を実現しています。

また、Go のゴルーチンとチャネルを用いた並列処理は、高負荷状況下でのシステムのパフォーマンスを最適化します。

例えば、高負荷のサーバーアプリケーションやリアルタイムデータ処理システムの開発においては、Go の高いパフォーマンスが大きなメリットとなります。

よって、高パフォーマンスなシステムを開発したい方には、Go が最適です。

大規模かつ複雑なシステムの開発を目指す方

Go のシンプルな文法と効率的な性能は、大規模かつ複雑なシステムの開発に適しています。

Go の設計は、可読性と保守性を重視しており、大規模なチームでの開発や長期間にわたるプロジェクトにおいてコードの管理を容易にします。

また、Go の優れた並列処理能力は、高負荷状況下でのシステムのパフォーマンスを最適化し、スケーラブルなアプリケーションの開発を支援します。

マイクロサービスの開発を目指す方

Go はマイクロサービスアーキテクチャの開発に最適です。

ゴルーチンやチャネルを用いた並列処理は、小さく独立したサービスの効率的な開発と運用を可能にし、それらを統合する際にも高いパフォーマンスを維持します。

特にクラウド環境やコンテナ技術と組み合わせた際、Go はその軽量性と高速性でマイクロサービスの開発を加速します。

手間をかけてでも安全なシステムを開発したい方

Go の型安全性と自動メモリ管理は、開発中のバグを大幅に減らします。

厳密な型システムは、コードの間違いや予期せぬ挙動を事前に検出し、安全で信頼性の高いコードの記述を促進します。

これは特に、バグが致命的な影響を及ぼす可能性のある大規模なアプリケーションやセキュリティが重要なシステムの開発において、重要な利点です。

もちろん、型システムは開発者の自由度を制限することもありますが、Go は型推論(型を明示的に指定しなくてもコンパイラが自動的に型を推測する機能)をサポートしており、開発者は型システムの恩恵を受けながらも、柔軟なコーディングを行うことができます。

そのため、安全なシステムを開発したい方には、Go が最適です。

まとめ

この記事では、プログラミング言語 Ruby と Go のそれぞれの特徴と向き・不向きについて詳しく見てきました。

Ruby はその直感的な文法と豊かなフレームワークにより、特に Web アプリケーションの迅速な開発や初学者にとって学びやすい環境を提供します。

一方で、Go は高いパフォーマンス、シンプルな文法、そして優れた並列処理能力を持ち合わせており、大規模なシステムやパフォーマンスが重要なアプリケーションの開発に適しています。

結局のところ、どちらの言語を学ぶかは取り組みたいプロジェクトの種類や、目標とするキャリアによって異なります。

それでも長い時間をかけて学習することになるので、今回の記事を参考に、自分にとって最適な言語を選択してみてください。

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この記事を書いた人

フルスタックWebエンジニアであり、プログラミングスクール講師でもあります。
プログラミングスクールのカリキュラム執筆にも携わっており、プログラミング教材に精通しています。
Rails / React / Next.js / Vue.js / AWS が得意技術。

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